はじめに:職場のハラスメントとMBTIの関連性
パワハラ・セクハラ・モラハラなど、職場でのハラスメントが大きな社会問題となっています。一度起こると、人間関係が崩壊し、仕事のパフォーマンスが下がるばかりか、当事者のメンタルヘルスにも深刻な影響を与えます。
ハラスメントを未然に防ぎ、万が一起きた際に適切に対処するためには、コミュニケーションの誤解や衝突を減らすことが鍵。そのサポートツールとして、**MBTI(Myers-Briggs Type Indicator)**が有用です。
MBTIは4つの軸(外向/内向、感覚/直観、思考/感情、判断/知覚)を組み合わせて16タイプに分類し、個々人の思考・行動パターンを把握しやすくするツール。これを用いて**「どのような場面で衝突や誤解が生じやすいか」**を整理し、ハラスメントリスクを低減することが可能になります。
本記事では、MBTIを活用したハラスメントの予防と対応策を、タイプ別具体例を交えて解説。組織やチームの中で、お互いの違いを理解し合う文化を育て、不要なトラブルやストレスを回避するヒントを提供します。

1. ハラスメントとMBTI:4つの軸が関係する理由
1-1. E/I(外向・内向)軸:強制的なコミュニケーション vs. コミュニケーション不足
- E型: 話すことで解決しようとしがち。内向型を巻き込みすぎ、**「雑談やミーティングで相手を追い詰める」**形でハラスメントと感じられる可能性。
- I型: 必要以上に話さないので、外向型上司から「やる気がない」と誤解され叱責されると、パワハラ感を受けるリスク。
1-2. S/N(感覚・直観)軸:具体性を求める vs. 抽象論を好む
- S型: 「具体的に言ってほしい」と要求するが、N型が抽象論ばかりだと、「具体策がない」と責める形のパワハラに発展する場合も。
- N型: アイデアやビジョンを否定され続けると、**「自分の考えが受け入れられない」**と感じモラハラ認定しやすい。
1-3. T/F(思考・感情)軸:論理重視 vs. 感情重視
- T型: クールに理詰めで叱りすぎると、F型が**「人格否定」と感じてしまう**可能性がある。
- F型: 感情を表に出しすぎたり、感情論で批判するとT型が**「嫌味」「ヒステリック」と感じ、ハラスメントとみなす**ケースも。
1-4. J/P(判断・知覚)軸:締切・計画を押し付ける vs. だらしない
- J型: 厳格なスケジュールを部下や同僚に強制し、守れなかったら攻撃的な態度→パワハラに近い。
- P型: ルーズな動きがJ型を苛立たせ、**「お前は使えない」**など言葉の暴力につながる恐れ。
2. タイプ別:ハラスメントリスクの具体例と予防策
2-1. ISTJ(責任感が強い「管理者」タイプ)
ハラスメントリスク事例
- 部下や同僚に対して、計画通りに動かないことを厳しく指摘し続け、相手が「人格否定」と感じる。
- 柔軟性不足で「マニュアル通りにやれ」と言い過ぎる。
予防策
- 柔軟性を学ぶ:思わぬ変更に対して「なぜその変更が必要か」まず理解しようとする姿勢を。
- 批判する際は行動だけを指摘し、「あなたがダメ」という言い方は避ける。
- ISTJが持つ正確さを活かしつつ、相手の状況をヒアリングするプロセスを組み込む。
2-2. ISFJ(優しい「擁護者」タイプ)
ハラスメントリスク事例
- 自分が尽くしすぎて疲弊し、限界になると突然感情的に相手を責める(パワハラ・モラハラと見られる可能性)。
- 相手の要望に断れず、それを他の人に押し付ける形で人間関係を悪化させる。
予防策
- 自分の限界を認識し、嫌なことには明確にNoを言う。無理を続けない。
- コミュニケーションで不満がたまる前に、小さな段階で相手に伝える(メール・メモなど)。
- 感情が爆発しそうなら、一旦冷静になる場を確保。
2-3. INFJ(理想を追う「提唱者」タイプ)
ハラスメントリスク事例
- 理想に合わない行動をする部下・同僚を激しく批判し、相手が「価値観の押し付け」と感じる。
- 自分の意見を理解されないまま溜め込み、爆発する形で人間関係を破壊。
予防策
- 相手が違う視点を持つのは当然と理解し、対話で摺り合わせする努力をする。
- 理想と現実にギャップがあるとき、「相手を否定」するのではなく、共通点を探す。
- ストレスを感じたら、小まめに相談できる人やカウンセリングを利用。
2-4. INTJ(戦略的な「建築家」タイプ)
ハラスメントリスク事例
- 自分の計画・戦略に従わない人を**「無能」**と切り捨てる言動をしてしまう。
- コミュニケーションが不足し、部下にとっては「冷酷な上司」と映りモラハラ扱い。
予防策
- 相手に実行を求める際、ロジック+共感を意識し、「あなたができる範囲で協力してほしい」等配慮を示す。
- 定期的に雑談や1on1を行い、部下・同僚の感情面を把握。
- 過度な完璧主義を捨て、失敗を許容する姿勢を育む。
2-5. ISTP(実践派の「巨匠」タイプ)
ハラスメントリスク事例
- 興味のない相手や案件にはそっけなく、相手が「冷たい態度」と感じてモラハラ主張される可能性。
- 上司の場合、「勝手にやってて」と放任しすぎて部下が困惑。
予防策
- 最低限のコミュニケーションはとる。相手の質問には誠実に回答するなど基本を怠らない。
- 放任がかえって相手にストレスを与えていないか確認し、サポートが必要なら明確にする。
- 自分の気持ちや意図を短くてもいいので言語化し、誤解を減らす。
2-6. ISFP(優しい「冒険家」タイプ)
ハラスメントリスク事例
- 自分の感性を否定する相手にストレスを溜め込み、突然キレる→相手が「ヒステリック」と捉えモラハラと言い出す。
- 断れずに不満を抱え、陰で愚痴り、関係が悪化。
予防策
- 早い段階で自分の嫌なことを丁寧に伝える。ストレスが溜まりきる前に言葉にしよう。
- 断れない場合でも「今は忙しいので難しい」など、少しずつ練習。
- 自分の価値観を大切にしつつ、相手も別の価値観を持っていると認める。
2-7. INFP(理想主義の「仲介者」タイプ)
ハラスメントリスク事例
- 周囲の現実的思考に挫折感を抱き、急に投げやりになって相手を批判的に責める。
- 「合わない」と決めつけて一方的に距離を置き、職場に支障。
予防策
- 「自分の理想と現実は違っていても、それは自然」と受け止める努力。
- 合わない相手でも事実ベースで話し合う場を持ち、意見交換してから決断。
- 感情を整理する手段(日記、カウンセラー、親しい友人)を用いて、急激な断絶を避ける。
2-8. INTP(論理好きの「論理学者」タイプ)
ハラスメントリスク事例
- 論理的に相手を論破し、「人格否定された」と誤解されるケース。
- コミュニケーションが少なく、必要事項を共有しないまま周囲が困惑・ストレスに。
予防策
- 論破するのではなく、「どこが問題で何を改善すると良いか」を建設的に伝える。
- コミュニケーションツールを活用し、必要事項を早めに共有。独断で進めずチェックを設ける。
- 相手の感情面にも配慮できるよう意識的に自己啓発(感情を否定せず、理解を示す)。
2-9. ESTP(冒険家の「起業家」タイプ)
ハラスメントリスク事例
- 行動力があるが、上司・同僚に突発的アイデアを押し付け、断ると強引に押し通そうとする→パワハラに映る。
- 問題が起きても勢いで乗り切ろうとし、他人を振り回す。
予防策
- メンバーに説明・同意を得るプロセスを増やす。「これやってみない?」→「どう思う?」と確認。
- ある程度のプランBを持ち、失敗時に責任をメンバーに押し付けない。
- 自分の行動が周りを振り回していないか、時々フィードバックを求める。
2-10. ESFP(エンターテイナータイプ)
ハラスメントリスク事例
- 周囲を巻き込んで盛り上げようとするが、内向型や集中したいメンバーがストレスを感じる。迷惑行為扱いでトラブルに。
- 仕事において軽率な発言で相手を傷つけ、セクハラ・モラハラ認定される可能性も。
予防策
- 自分が盛り上げたいシーンなのか、周りが静かに仕事したいシーンなのか見極める。
- ジョークやからかいも相手の受け止め方を考慮し、暴走しない。
- 賑やかにできない場面では、別の方法(音楽を聴くなど)でテンションを調整。
2-11. ENFP(創造的な「広報運動家」タイプ)
ハラスメントリスク事例
- 自分の新アイデアを押し込み、他人の意見をあまり聞かず突き進む→相手が「強引だ」と感じる。
- 感情が高ぶると不満をぶちまける形で衝突が激化。
予防策
- アイデアを共有するときは他人の意見も積極的に聞く姿勢を持つ。
- 感情的になったとき、即反応せず一旦クールダウンし、冷静に話し合う場を設ける。
- 先走らず実務的な根拠をそろえ、周囲に負担をかけすぎないよう注意。
2-12. ENTP(討論好きな「討論者」タイプ)
ハラスメントリスク事例
- ディベート好きで、相手を論破しようとする。相手が「人格攻撃を受けた」と感じるリスク。
- 実行面で責任を負わず口だけ出すと、周囲が不満をためモラハラ呼ばわりされる可能性。
予防策
- 相手が不快になる前に**「あくまで意見交換であって、人格批判ではない」**と丁寧に伝える。
- 議論後の実行フェーズに参加し、責任を分担してチームに貢献する。
- 攻撃的にならないよう、建設的な解決策を提案する姿勢を忘れない。
2-13. ESTJ(管理力ある「幹部」タイプ)
ハラスメントリスク事例
- 強いリーダーシップで命令口調になり、相手がパワハラと感じる。
- 柔軟性が欠け、部下の都合を無視して「こうしろ!」と押し付ける。
予防策
- 指示を出す際に理由や背景を丁寧に説明。強権的に押し付けるのではなく合意を取りに行く姿勢。
- メンバーが困っていないか、定期的にフォローし、自分の要求が過度でないか確認。
- 柔軟対応が必要なシーンでは、P型メンバーのアイデアを取り入れる余地を作る。
2-14. ESFJ(協調的な「領事官」タイプ)
ハラスメントリスク事例
- 過度に相手のプライベートや感情に踏み込み、「おせっかい」扱いされる。
- チームの調和を守るために一部を排除する「サイレントモラハラ」をするケースも。
予防策
- プライベートな話題は相手の反応を見てほどほどにする。押しつけの善意は控える。
- 調和優先で問題を放置せず、必要な衝突や議論を真正面から対処する勇気を持つ。
- 自分が過保護になりすぎていないか、周囲に意見を聞く。
2-15. ENFJ(情熱的な「主人公」タイプ)
ハラスメントリスク事例
- メンバーを引っ張る過程で、相手の意見を十分に聞かず独断→相手が「強制されている」と感じモラハラ。
- 感情的に落ち込みすぎて周りに八つ当たりし、トラブルに。
予防策
- 重要な意思決定時に、メンバー全員の意見や懸念をヒアリング。自分のリードを押し付けない。
- 感情の波をコントロールする方法(日記、カウンセリング)を取り入れ、八つ当たりを回避。
- 部下や同僚の得意分野を尊重し、必要以上に指示しない。
2-16. ENTJ(戦略的な「指揮官」タイプ)
ハラスメントリスク事例
- 結果を追求するあまり、部下への圧力が強すぎる。「仕事ができない」と罵倒しがち→パワハラと判断される。
- 人間関係の感情面を軽視し、組織内に不満をため込ませる。
予防策
- 論理的な目標設定と同時に、メンバーの負担やモチベを意識し、丁寧にフォロー。
- 高圧的にならないよう、「なぜこの目標が必要か」を説明し、相談しやすい環境を作る。
- 相手の感情表現や悩みにも耳を傾け、コミュニケーションの頻度と質を高める。
6. まとめ:MBTIを活用した「苦手なタイプ」との最適距離・調整術
- 人間関係断捨離は一つの選択肢ですが、特に職場では完全に縁を切るのが難しい相手も多い。
- MBTIを活用すれば、相手の行動パターンや考え方の違いを客観視し、「なぜ衝突するのか」「どんな対処が有効か」を整理しやすい。
- 軸ごとに注意点を理解し、お互いの立場を尊重するコミュニケーションを試みれば、トラブルが減り必要以上に断絶しなくても済む可能性が高い。
- それでも解決策が見つからずストレスが過大なら、最終的に距離を置くか別のチームや転職を考えるなどの断捨離方策も検討。それは最後の手段であり、まずはMBTIでの相互理解を試してみる価値がある。
あなたの職場や人間関係の課題を見直す際、ぜひMBTIの視点を取り入れ、苦手なタイプとの付き合い方を変えてみてください。想像以上にスムーズな関係改善につながるかもしれません。

参考文献・関連リソース
- Myers, I. B., McCaulley, M. H., Quenk, N. L., & Hammer, A. L. (1998). MBTI Manual: A guide to the development and use of the Myers-Briggs Type Indicator. Consulting Psychologists Press.
- 16Personalities:https://www.16personalities.com/
- 日本MBTI協会:https://www.mbti.or.jp/
- 人間関係断捨離・コミュニケーション関連書籍:『人間関係をリセットする技術』『嫌われる勇気』など
今後の記事予告
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